ケンブリッジ生まれのメロディー
世界中の無数の時計が15分ごとに奏でるこの旋律は、もともとロンドンのために書かれたものではありません。1793年、ケンブリッジの大学教会であるグレート・セント・メアリー教会に新しく設置された時計のために作曲されました。そのため、ケンブリッジ・チャイム、あるいはケンブリッジ・クォーターズとも呼ばれます。
作者は一般にジョセフ・ジャウェット牧師とされ、当時若い音楽家だったウィリアム・クロッチが協力したといわれています。メロディーは、ヘンデル《メサイア》のアリア「I know that my Redeemer liveth(私は知る、私を贖う方は生きておられると)」の一節から生まれ、4つの鐘のための短いフレーズに組み直されたものです。
ケンブリッジからウェストミンスターへ
1859年にウェストミンスター宮殿の大時計が動きはじめたとき、そのクォーターの鐘にはケンブリッジのメロディーが採用されました。大学町の空に響いていたチャイムが、イギリス議会の音になったのです。
大鐘は1858年にホワイトチャペル鋳造所で鋳造され、重さは約13.7トンあります。人々はまもなくこの鐘をビッグ・ベンと呼ぶようになり、その愛称は時計へ、さらに塔全体へと広がりました。1859年に鐘にひびが入ると、鋳造し直すのではなく鐘を回転させ、軽いハンマーを取りつけました。少し不完全なその声は、ここに理由があります。長く時計塔と呼ばれてきた塔は、2012年にエリザベス・タワーとなりました。
2017年から2022年までは塔の大規模な修復が行われ、鐘はほぼ沈黙していました。修復を終えたいま、クォーターと時の鐘が再びウェストミンスターの空に鳴り響いています。
4つの鐘と5つのチェンジ
クォーターの鐘には、G♯・F♯・E・Bに調律された4つの鐘を使います。「チェンジ」と呼ばれる4音ずつの異なる5つの音列が、順番に巡ってゆきます。15分には1つ、30分には2つ、45分には3つ、正時には4つのチェンジを鳴らすので、音の数は4、8、12、そして16になります。
正時には16番目の音のあと、低いEに調律された大鐘が時の数だけ打たれます。1時間を通して、5つのチェンジの20の音がそれぞれ2回ずつ鳴るため、どのクォーターもひとつ前とまったく同じには聴こえません。
鐘に添えられた言葉
塔の時計室には、正時のチャイムのリズムに合わせて書かれた短い祈りの言葉が掲げられています。「All through this hour / Lord be my guide / And by Thy power / No foot shall slide.」(この時のあいだ、主よ、わが導きとなりたまえ。御力によりて、わが足のすべることなからん)。各行は4音節で、チェンジの1音に1音節が対応しています。
この言葉は時計が歌ったり奏でたりするものではありません。メロディーを覚え、鐘が鳴るのに合わせて一音ずつたどるための手がかりにすぎません。
塔からリビングへ
このメロディーは塔の中だけにとどまりませんでした。家庭用の時計職人たちが、ホールクロックや掛時計、置時計のチャイム機構に組み込み、家で鳴るチャイム時計といえば多くの人がまず思い浮かべるメロディーになりました。
このサイトでは、コントワーズ時計から置時計まで、4つの時計でこのメロディーを聴けます。ビッグ・ベンは大鐘そのものが時を打ちます。お好きな時計でウェストミンスターの鐘を聴くこともできます。
よくある質問
ウェストミンスターの鐘を作曲したのは誰ですか?
1793年にケンブリッジのグレート・セント・メアリー教会のために作曲されました。作者は一般にジョセフ・ジャウェット牧師とされ、ウィリアム・クロッチが協力したといわれています。
ウェストミンスターの鐘にはどんな音が使われていますか?
G♯・F♯・E・Bの4つの音で、4音ずつの5つの音列に組まれています。そのあと、より低いEで時の数が打たれます。
ウェストミンスターの鐘に歌詞はありますか?
「All through this hour, Lord be my guide, and by Thy power no foot shall slide.」という祈りの言葉があります。塔の時計室に掲げられています。
なぜビッグ・ベンと呼ばれるのですか?
ビッグ・ベンは、重さ約13.7トンの時鐘である大鐘の愛称です。その名前が、のちに時計や塔にも使われるようになりました。